値上げ交渉の資料は、結論から言えば公表データ3点と自社の数字を並べたA4一枚で足ります。2026年度の最低賃金は全国加重平均で56円上がり1,177円になりました。
取引先が社内で決裁を通せる材料を先に渡すと、交渉は「お願い」から「確認」に変わります。この記事では、国の指針が根拠として認める公表データの選び方と、そのまま使えるシートの雛形をまとめます。
この記事でわかること
- 値上げ交渉の資料に入れる公表データ3点
- 原価の内訳を出さずに済む根拠と国の指針
- A4一枚で作る3点根拠シートの雛形
- 拒否されたときに次の協議へつなぐ記録の残し方
何から手をつけるか、一緒に決めます
AI導入もWeb施策も、やること自体より「自社がいまどれをやるべきか」の判断のほうが難しいものです。GYAKUTENコンサルティングは、月次で数字を見ながら優先順位を決めるところから伴走します。
コンサルティングを見る 無料相談を予約する値上げ交渉の資料とは何を入れた書類のこと?
値上げ交渉の資料とは、取引先の担当者が社内決裁を通すために使う「値上げの根拠を書いた書類」のことです。根拠3項目を1枚に並べ、相手が稟議に貼れる形にすると通りやすくなります。
2026年10月時点で、価格交渉そのものは多くの会社で行われています。中小企業庁は2026年6月26日、価格交渉促進月間(2026年3月)のフォローアップ調査の結果を公表しました。回答69,625社のうち「価格交渉が行われた」割合は90.7%です。一方で価格転嫁率は54.2%にとどまり、労務費に限ると50.0%です(経済産業省 2026年6月26日)。
交渉の場はあっても、上がるのはコスト増の半分ほどという状況です。足りないのは熱意より、相手が上司に説明できる材料でしょう。では、何を書けば上司に説明できるのでしょうか。
合同会社GYAKUTENは、この材料を「公表データ」「自社の数字」「据え置いた場合の影響」の3段で1枚にまとめる形を勧めています。本記事ではこの1枚を「3点根拠シート」と呼びます。狙いは、相手の上司が3分で読める1枚。
- 公表データ: 誰でも確かめられる国の統計
- 自社の数字: 人件費比率と希望する上げ幅
- 据え置いた場合: 品質や納期に出る影響
根拠資料に使える公表データは、最低賃金のほかに何がある?
根拠資料の第一候補は都道府県別の最低賃金とその上昇率です。全国加重平均は2026年度に56円上がり、1,177円になりました。
56円の上げ幅は、過去最高だった前年度の66円に次ぐ水準と報じられています(労働新聞 2026年9月14日)。前年度の1,121円から見ると上昇率は約5.0%で、取引先も同じ報道を目にしています。
国の指針が根拠として例示する公表資料は、最低賃金だけではありません。業種に合うものを1つ選び、最低賃金と並べると説得力が増します。
パートやアルバイトの比率が高い会社は最低賃金、正社員が中心の会社は春季労使交渉の妥結額が向いています。自社の給与の決まり方に近いデータを選ぶのが基準です。
- 都道府県別の最低賃金と上昇率
- 春季労使交渉の妥結額と上昇率
- 公共工事設計労務単価(建設関連)
- トラック運送の標準的な運賃(運送)
- 毎月勤労統計の賃金指数や消費者物価指数
資料の1行目には、この公表データを置くのがコツです。最初に見た数字がその後の判断の基準になるため、自社の希望額より先に「誰も否定できない数字」を見せます。
月次の数字管理まで含めて価格の見直しを進めたい場合は、GYAKUTENコンサルティングのプランと料金も参考になります。
原価の内訳を全部見せる必要は実はない——指針が求めるのは公表資料
原価の内訳をすべて開示する必要はありません。理由は、国のガイドライン(指針)が発注側に「根拠を求めるなら公表資料に基づくこと」を求めているからです。
値上げ交渉では「原価計算書を出して1円単位で説明しないと通らない」と考えられがちです。なぜ公表資料だけで足りるのでしょうか。根拠は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です。内閣官房と公正取引委員会が2023年11月29日に公表し、2026年1月1日に改正しました。指針は発注者の行動として次のように定めています。
「労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示して希望する価格については、これを合理的な根拠があるものとして尊重すること。」(労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針)
指針は、満額を受け入れない場合に発注者がその理由を説明することも求めています。社外秘の原価を細かく出すより、公表データで希望額を示すほうが、受注側の負担も情報漏れの心配も小さく済みます。
ただし、原材料費やエネルギーの値上がりは指針の対象外です。仕入れ先の値上げ通知や請求書の推移など、取引先が確かめられる書面を添えてください。
値上げ交渉の資料作成はどんな手順で進める?
資料作成の基準は「相手がそのまま稟議に貼れるか」です。3点根拠シートは次の雛形の6項目を埋めるだけで完成します。
【宛先】◯◯株式会社 購買部 ◯◯様
【お願いの内容】◯年◯月納品分から、単価を◯円から◯円へ改定させてください(改定率◯%)。
【根拠1・公表データ】◯◯県の最低賃金は◯円から◯円へ◯%上がりました(出典: 厚生労働省)。
【根拠2・自社の数字】当社の売上に占める人件費は◯%です。人件費比率×最低賃金の上昇率で、改定率の目安は◯%になります。
【根拠3・据え置いた場合】現行単価のままでは、◯月以降の人員を維持できず、納期が◯日延びる見込みです。
【ご検討のお願い】◯月◯日までにご回答いただけますと幸いです。協議の場を設けていただけるようお願い申し上げます。
根拠2の改定率は、人件費比率に最低賃金の上昇率を掛けて出します。人件費比率30%×最低賃金の上昇率5.0%=1.5%が、時給が最低賃金に近い職場での目安です。
手順は次の4つです。1日で下書きまで進められます。
- 自社の所在地の最低賃金と上昇率を調べる
- 直近1年の人件費比率を決算書から出す
- 据え置いた場合の影響を1文で書く
- 回答期限と協議の希望日を入れて送る
値上げの理由は「人を雇い続けるため」のように、取引先にも得がある言葉で書くと受け入れられやすくなります。改定率の計算をもっと詳しく知りたい方は値上げ率の計算と人件費スライド式も確認してください。
値上げ交渉の事例:秋田県のクリーニング店は資料で13〜15%上げた
資料で値上げを通した例として、秋田県が公表した価格転嫁実践事例があります。従業員4名のクリーニング業者は、中小企業庁が設置したよろず支援拠点の助言を受け、全体で13〜15%の価格転嫁に成功しました。
この会社は顧客離れを恐れて交渉に踏み出せず、資金繰りが悪化していました。転機は、中小機構の「価格転嫁検討ツール」で原材料費などの上昇額を数字にし、自社努力では吸収しきれない状況をグラフにしたことです(秋田県 価格転嫁実践事例)。
- 経営者が資料を持って決裁権者を直接訪問
- 感情ではなく数字で交渉
- 営業利益が月30〜40万円改善
- 金融機関から6か月の返済猶予も獲得
注目したいのは、資料が値上げだけでなく金融機関との話し合いにも使われた点です。1枚の根拠資料は、取引先、銀行、社内の3か所で使い回せます。業種別の進め方は中小企業の価格転嫁を成功させる7手順にもまとめています。
値上げ交渉を拒否されたら、交渉記録と取適法で次の協議へ
拒否された場合の答えは、交渉記録の4項目を残して次の協議日を決めることです。一度の「難しい」で終わらせず、話し合いを続ける形にします。
2026年1月1日に下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に改正され、協議に応じない一方的な代金の決定が禁止行為に加わりました(政府広報オンライン)。前述の調査でも、全額の転嫁に至らなかった企業のうち「納得できる説明があった」と答えた企業は約6割でした。
再交渉の目安は、前回の協議から3か月後。最低賃金や物価の新しい公表値が出た時点も、資料を更新して申し入れる好機です。
残りの約4割は、説明すら受けていない計算です。指針は交渉の記録を作り、発注者と受注者の双方で保管することを求めています。日付、出席者、提示額、相手の回答の4項目をメールで送り、返信をもらえば十分な記録になります。
運送業なら、標準的な運賃を使った運賃交渉の例文と文書テンプレが近道でしょう。それでも話が進まないときは、各都道府県のよろず支援拠点や下請かけこみ寺に無料で相談できます。
すぐ実践できる手順
- 今週中に、主要取引先3社の現行単価と最終改定日を一覧にする
- 所在地の最低賃金と上昇率を、厚生労働省の公表値で確認する
- 3点根拠シートの雛形を1社分だけ埋めてみる
- 取引先の担当者に協議の日程を打診する
まとめ
値上げ交渉の資料は、公表データ、自社の数字、据え置いた場合の影響の3点をA4一枚にまとめれば十分です。国の指針は、公表資料に基づく希望額を「合理的な根拠」として尊重するよう発注者に求めています。
次のどれか1つでも当てはまるなら、資料づくりを外の目と一緒に進める価値は十分にあるでしょう。
- 主要取引先の単価を2年以上改定していない
- 人件費比率を決算書から出したことがない
- 交渉の記録を社内に残していない
まずは無料ヒアリングで、自社の取引先ごとに改定の優先順位を整理できます。GYAKUTENコンサルティングは月2万円からのチャットプランで、価格の見直しやKPI管理を月次で伴走します。自社全サービスで継続率97%の実績です。
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明日の朝は、いちばん長く単価を据え置いている取引先を1社選び、その会社の改定率を計算してください。
参考文献・出典
- 経済産業省・中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果」2026年6月26日(参照日: 2026-10-03)
- かいけつ!人事労務「価格転嫁率は前回から微増の54.2%」2026年6月30日(参照日: 2026-10-03)
- 労働新聞「最賃56円引上げに 平均時給は1177円」2026年9月14日(参照日: 2026-10-03)
- 内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」2023年11月29日(2026年1月1日改正)(参照日: 2026-10-03)
- 公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(参照日: 2026-10-03)
- 政府広報オンライン「下請法は取適法へ」(参照日: 2026-10-03)
- 秋田県「価格転嫁実践事例(クリーニング業)」(参照日: 2026-10-03)
制作: 合同会社GYAKUTEN編集部(生成AIで下書きを作成し、出典を確認して公開)/会社・代表プロフィール


