値上げ率の計算は「(新価格−旧価格)÷旧価格×100」が基本で、人件費の上昇を価格に移すときの答えは「人件費比率×賃上げ率」です。人件費が売上の3割の会社なら、賃上げ5%に必要な値上げ率は1.5%です。
2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円の答申となり、10月から都道府県ごとに順次上がります。賃上げ率と同じ5%をそのまま価格に乗せると、取引先の反発を招くうえに必要以上の値上げになりがちです。計算式、人件費の移し方、客数が減ったときの上限、上げ幅を小さくする方法までを順に見ていきます。
先に結論
- 値上げ率は、差額を旧価格で割って100を掛けて出す
- 人件費の上昇分は「人件費比率×人件費の上昇率」だけ価格に移せば、利益額は値上げ前と同じに保てる(本記事では人件費スライド式と呼びます)
- 取引先ごとの引き上げ額は、人件費の上昇総額に取引シェアを掛けて出す
- 値上げ後に許される客数の減少幅は「値上げ率÷(粗利率+値上げ率)」で決まる
2026年9月時点で、2026年度の地域別最低賃金の答申額は全国加重平均1,177円です。前年度の1,121円から56円上がりました(補助金ポータル、ミライジン)。上昇率に直すと約5.0%です。合同会社GYAKUTENは、KPI管理を含む経営の月次伴走で、値上げ幅を式で決めてから取引先に伝える手順を扱っています。
何から手をつけるか、一緒に決めます
AI導入もWeb施策も、やること自体より「自社がいまどれをやるべきか」の判断のほうが難しいものです。GYAKUTENコンサルティングは、月次で数字を見ながら優先順位を決めるところから伴走します。
コンサルティングを見る 無料相談を予約する値上げ率の計算方法と旧価格で割る理由は?
値上げ率とは、旧価格に対して価格が何%上がったかを示す割合です。計算方法は「(新価格−旧価格)÷旧価格×100」の1行で、1,000円の商品を1,080円にすれば値上げ率は8%になります。取引先や顧客に示す数字は、すべてこの式でそろえます。
計算例は(1,080円−1,000円)÷1,000円×100=8%です。反対に、8%上げた後の価格を先に知りたいときは、1,000円×(1+0.08)=1,080円と旧価格に掛け算をします。
- 割る数はいつも旧価格にする
- 値下げ率も同じ式で、答えがマイナスになる
- 2回の値上げは掛け算で合算する(5%を2回で10.25%)
よくある間違いは、新価格で割ってしまうことです。80円の差額を1,080円で割ると約7.4%となり、実際の8%より小さく見えます。社内の資料と取引先への説明で分母が違うと、同じ値上げでも数字が食い違い、交渉の場で信用を落とします。
もう1つの落とし穴は、率の足し算。5%の値上げを2回行うと、1.05×1.05=1.1025で、合計は10%ではなく10.25%になります。年に2回の改定を予定している会社は、年間の上げ幅を掛け算で出してから顧客に伝えてください。
人件費の値上げ率は最低賃金56円増でどう計算する?
人件費の上昇を価格に移すときの目安は「人件費比率×人件費の上昇率」です。売上1億円・人件費3,000万円(人件費比率30%)の会社で人件費が5.0%上がると、増える費用は150万円で、売上に対する割合は1.5%になります。
本記事では、費用が売上に占める割合の分だけ価格を動かすこの考え方を、人件費スライド式と呼びます。値上げで増える売上150万円が、増えた人件費150万円と同じ額になるため、客数が変わらなければ利益額は値上げ前と変わりません。
中央最低賃金審議会が示した2026年度の目安は、全国平均55円増の1,176円でした。33都道府県の答申がこの目安を上回り、全国加重平均は56円増の1,177円となりました(nippon.com、補助金ポータル)。発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月1日から12月2日の間に順次切り替わります。
人件費比率 | 人件費が5.0%上がったときの必要な値上げ率 | 売上1億円での人件費の増加額 |
|---|---|---|
10% | 0.5% | 50万円 |
20% | 1.0% | 100万円 |
30% | 1.5% | 150万円 |
40% | 2.0% | 200万円 |
50% | 2.5% | 250万円 |
最低賃金に近い時給の人だけが上がる会社では、上昇率にその人たちの人件費の割合を掛けます。人件費比率30%で、パート・アルバイトの人件費が人件費全体の40%なら、30%×40%×5.0%=0.6%が目安です。正社員の賃上げも同時に行う場合は、その上昇分を別に足してください。
取引先ごとの引き上げ額は、人件費の上昇総額に取引シェアを掛けて出します。150万円の上昇で、ある取引先の売上シェアが20%なら、その取引先に求める引き上げ額は年30万円です。人件費比率は、決算書の販管費と製造原価に含まれる人件費を足せば出せます。
実は賃上げ率5%をそのまま価格に乗せる必要はない
賃上げ率と同じ5%を価格に乗せなくてよい理由は、価格は売上全体にかかり、人件費はその一部にすぎないからです。人件費比率30%の会社が価格を5%上げると、必要な1.5%の約3.3倍を求めることになり、根拠を聞かれた時点で説明が崩れます。
内閣官房と公正取引委員会は2023年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を定めました。指針は、最低賃金の上昇率などの公表資料を用いた受注者の希望価格を、合理的な根拠のあるものとして尊重するよう発注者に求めています(公正取引委員会)。今回の最低賃金なら、上昇率約5.0%がその公表資料にあたります。
中小企業庁の2026年3月の調査では、価格転嫁率は54.2%で、コスト別では労務費が50.0%にとどまりました(社会保険労務士PSRネットワーク)。公正取引委員会が2026年9月25日に公表した石油関連製品の価格転嫁調査では、約4割の事業者が力関係などを理由に価格協議を申し出ていませんでした(テレ東BIZ)。
- 通説: 賃上げ5%なら価格も5%上げる
- 実際: 人件費比率30%なら1.5%で利益額は保てる
- 過大な要求は、根拠の説明で崩れやすい
- 小さく正確な数字は、協議を切り出す口実になる
原材料費やエネルギー費も上がっているなら、費用ごとに「売上に占める割合×上昇率」を出して足し合わせます。取引先に出す文書の組み立ては中小企業の価格転嫁を成功させる7手順で、運送会社の場合は運賃交渉の例文と文書テンプレで具体的に紹介しています。
値上げで離脱率が何%までなら粗利額は保てる?
値上げ後も粗利額を保てる客数の減少幅の目安は「値上げ率÷(粗利率+値上げ率)」です。粗利率30%の会社が1.5%値上げした場合、客数が約4.8%減るまでは、粗利額が値上げ前を下回りません。
計算例は1.5%÷(30%+1.5%)=0.0476で、約4.8%です。5%値上げなら5%÷(30%+5%)=0.143となり、客数が約14.3%減るまで粗利額は変わりません。
この許容幅は、値上げの前に決めておく「撤退ライン」として使います。値上げ後3か月の客数が許容幅より大きく減ったら、上げ幅ではなく商品の組み合わせや提供方法を見直す合図です。
- 値上げ幅が小さいほど、許容幅も小さくなる
- 粗利率が低い業種ほど、許容幅は大きくなる
- 許容幅を超えそうなら、単品の値上げよりセット化を試す
価格は「1商品あたりの利益×販売数×リピート数」の総和で判断するのが基本です。値上げ直後は客数だけを見がちですが、リピート率が落ちていないかも月次で確かめると、上げ幅が適切だったかを判断できます。追う指標の決め方は中小企業のデータ活用を1判断1指標シートで始める方法が参考になります。
値上げの伝え方でも受け止め方は変わります。年額の増加を月額や1回あたりに割って示すと、同じ上げ幅でも支払いの負担感は小さくなります。1,000円の月額サービスを1.5%上げるなら、1か月15円、1日あたり1円未満の変化です。
工数削減で値上げ率を小さくする計算方法は?
値上げ率を小さくする答えは、賃上げと同時に作業時間を減らし、その削減率を式に入れることです。人件費比率30%・賃上げ5.0%の会社でも、作業時間を3%減らせば、必要な値上げ率は約0.6%まで下がります。
式は「人件費比率×{(1+賃上げ率)×(1−工数削減率)−1}」です。30%×(1.05×0.97−1)=約0.56%となり、賃上げだけの1.5%から約1ポイント下がります。値上げと工数削減を同じ表に並べると、どちらにどれだけ頼るかを社内で決めやすくなります。
工数の削減幅は、情報の一元化で大きく変わります。合同会社GYAKUTENの運送統合管理システムを導入した東翔運輸株式会社(43台・53名)では、車両・ドライバー・休暇の管理をまとめました。その結果、管理業務は約50%削減され、休暇調整の電話も約8割減りました。削減されたのは管理業務の時間で、人件費全体の削減率ではない点に注意してください。
削減率を出しやすいのは、次の3つの作業。
- 二重入力や電話での確認など、同じ情報を何度も扱う作業
- 紙の台帳や表計算ソフトへの転記
- 担当者しか分からない判断の手順
削減率は、1週間だけ作業時間を記録し、改善後の1週間と比べれば出せます。3%は1日8時間で約15分にあたり、転記や確認の電話を1つ減らすだけで届く水準です。
実行手順
人件費スライド式 試算シート
(1) 人件費比率=年間人件費÷年間売上(例: 3,000万円÷1億円=30%)
(2) 人件費の上昇率=最低賃金の上昇率×対象者の人件費の割合(例: 5.0%×100%=5.0%)
(3) 必要な値上げ率=(1)×(2)(例: 30%×5.0%=1.5%)
(4) 取引先ごとの引き上げ額=人件費の上昇総額×取引シェア(例: 150万円×20%=30万円)
(5) 許される客数の減少率=(3)÷(粗利率+(3))(例: 1.5%÷31.5%=約4.8%)
- 決算書から年間の人件費と売上を拾い、人件費比率を出す
- 自社のある都道府県の最低賃金の改定額と発効日を確かめる
- 試算シートで必要な値上げ率と取引先ごとの引き上げ額を出す
- 許される客数の減少率を撤退ラインとして決め、月次で客数とリピート率を追う
- 最低賃金の上昇率を根拠として1枚にまとめ、取引先に示す
自社の値上げ幅を数字で固めたい方へ
当てはまる項目はいくつありますか。
- 人件費比率を1年以上計算していない
- 値上げ幅を賃上げ率と同じにしようとしている
- 値上げ後の客数やリピート率を月次で見ていない
次のどれか1つでも当てはまるなら、式に入れる数字の確認から始めると、上げ幅と伝え方を同時に決められます。GYAKUTENコンサルティングは、KPI管理やDXを含む経営課題を月次で回す実務型の支援で、チャットプランは月2万円から(税別・月単位で解約可)です。無料ヒアリングから始められ、自社全サービス継続率97%の実績があります。
顧問料の比べ方は中小企業のコンサル選び方と顧問料の比べ方で整理しています。
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最後に
値上げ率の計算は、差額を旧価格で割る基本の式と、人件費比率を掛ける人件費スライド式の2つで足ります。2026年度の最低賃金は56円増で、上昇率は約5.0%です。人件費が売上の3割なら必要な値上げ率は1.5%で、その根拠は公表資料で示せます。
明日の朝は、決算書から年間の人件費と売上を書き出し、人件費比率を1つの数字にしてください。
参考文献・出典
- 補助金ポータル「2026年最新 最低賃金はいくら?47都道府県一覧」(参照日: 2026-09-26)
- ミライジン「2026年度答申 全国最低賃金ランキング」(参照日: 2026-09-26)
- nippon.com「最低賃金55円引き上げ、全国平均1176円に」(参照日: 2026-09-26)
- 公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(参照日: 2026-09-26)
- 社会保険労務士PSRネットワーク「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果を公表」(参照日: 2026-09-26)
- テレ東BIZ「石油製品高騰めぐり公取委が価格転嫁状況調査」(参照日: 2026-09-26)
- Web担当者Forum「値上げ率の計算方法」(参照日: 2026-09-26)
制作: 合同会社GYAKUTEN編集部(生成AIで下書きを作成し、出典を確認して公開)/会社・代表プロフィール

