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トラックの適正原価とは:人件費は全産業平均、燃料は130円/L案

中山 蒼約10分で読めます
トラックの適正原価とは:人件費は全産業平均、燃料は130円/L案
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この記事の要約

トラックの適正原価は、2028年6月までに導入される運賃・料金の下限で、継続して下回ると許可の更新が認められなくなります。2026年10月の国交省案では、人件費は全産業平均の賃金、燃料は130円/Lが基準です。告示は稼働時間と走行距離を入れる計算式になる見込みのため、自社の1時間・1km単価を今から記録する方法と試算例を紹介します。2026年10月更新

トラックの適正原価とは、国が告示する運賃・料金の下限となる原価のことです。結論は、2028年6月までに、これを継続して下回る運賃での受託・委託が禁止され、違反を続けると5年ごとの許可更新が認められなくなることです。

2026年10月に国土交通省が示した検討会の資料では、人件費は全産業平均の賃金を基準にし、燃料費の基準価格は1リットル130円とする案が出ました。告示の中身はまだ確定していませんが、計算に使う数字の種類はほぼ見えてきました。中小の運送会社が今のうちに準備できることを、案の数字と一緒に整理します。

先に結論

  • 適正原価は運賃表ではなく、稼働時間と走行距離から出す計算式になる見込み
  • 施行は2028年6月まで、許可の更新制と同時に始まる
  • 10月の国交省案は人件費・燃料130円/L・手数料10%の3点が軸
  • 自社の1時間あたり固定費と1kmあたり変動費を今から記録しておく

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トラックの適正原価とは?標準的運賃と何が違う?

適正原価とは、トラック事業者が受け取るべき運賃・料金の原価部分として国土交通大臣が告示する水準のことです。標準的運賃は「目安」でしたが、適正原価は下回ることが禁止される「下限」で、法律上の拘束力がある点が最大の違いです。

根拠は、2025年6月4日に成立し6月11日に公布された改正貨物自動車運送事業法など、いわゆる「トラック適正化二法」です。LNEWSの2025年6月5日の記事によると、国土交通大臣が燃料費・人件費・委託手数料などを反映した適正原価を定め、それに伴って標準的な運賃は廃止されます。事業の許可は5年ごとの更新制になり、更新を受けなければ効力を失います。

項目

標準的運賃(現行)

適正原価(2028年6月までに施行)

位置づけ

運賃交渉の目安

下回ることが禁止される下限

示し方

距離制・時間制の運賃表

稼働時間と走行距離を入れる計算式の方向

人件費

地域別の時給単価

全産業平均の賃金を踏まえた額

燃料の基準

全国一律120円/L

130円/Lとする案(2026年10月時点)

違反したとき

罰則なし

継続違反で許可の更新が認められない

合同会社GYAKUTENは、東翔運輸株式会社の運送統合管理システム導入など、運送会社の車両・勤務データの管理を支援してきました。その立場から見ると、適正原価は「国が決めた運賃を請求すれば済む制度」ではなく、自社の稼働実績を数字で示せる会社ほど交渉しやすくなる制度です。そこで本記事では、稼働1時間と走行1kmの単価を毎月書き留める方法を「1時間・1キロ原価メモ」と呼び、後半で試算例を示します。

トラック適正化二法の適正原価はいつから始まる?

適正原価の規定は、公布の日から3年以内、つまり2028年6月までに施行されます。2026年10月時点で施行の期限まではおよそ1年8か月あり、告示の数値はまだ出ていません。

井林辰憲国土交通相は2026年10月13日の記者会見で、適正原価制度の「段階的な導入を検討している」と述べ、導入時期を遅らせるのは難しいとの考えを示しました(熊本日日新聞・共同通信配信 2026年10月13日)。有識者検討会は年内に提言をまとめる予定です。

  1. 2025年6月11日: トラック適正化二法が公布
  2. 2026年1月: 国交省が全事業者に原価の実態調査(回答義務あり)
  3. 2026年7月17日: 適正原価の有識者検討会が初会合
  4. 2026年10月: 第4回検討会で人件費・燃料・料金の論点を整理
  5. 2026年11〜12月: 提言案の骨子と取りまとめ(予定)
  6. 2028年6月まで: 適正原価と許可更新制が施行

告示は、提言のあとに審議を経て、十分な周知期間を取れる時期に出る見通しです(LNEWS 2026年7月17日)。数値が出てから準備を始めると、荷主との交渉期間が短くなります。

10月の国交省案でトラックの適正原価はいくらになる?

人件費の基準は全産業平均の賃金、燃料の基準は130円/Lというのが第4回検討会の案で、金額そのものはまだ決まっていません。あわせて利用運送手数料の算定方法も示されました。いずれも確定ではないものの、どの数字を記録しておけばよいかはこの3点から読み取れます。

国土交通省の第4回検討会資料(令和8年10月「適正原価の設定に向けた個別論点の検討②」)によると、令和7年度の賃金構造基本統計調査で、中小型トラックの年間賃金は449万円で全産業平均の546万円を18%下回ります。時間外手当を除くと383万円で、差は25%に広がります。

  • 人件費: 所定外給与を含まない全産業平均の時給単価が基準の案
  • 残業・深夜早朝: 固定費に含めず、割り増した時給で別に加算
  • 燃料費: 基準価格を130円/L、超えた分は燃料サーチャージで収受
  • 利用運送手数料: 元請が委託する運送の運賃原価の10%とする案

燃料サーチャージは原則導入とされ、計算は資源エネルギー庁の石油製品価格調査のローリー渡価格と実際の燃料使用量で行う案です。同じ資料では、燃料サーチャージを導入済みの事業者は24%(n=18,951)にとどまり、69%が導入していないと答えています。荷待ちが2時間を超えたときの一律5割増しは、適正原価では設けない方向です。

地域の単位は、ブロック単位、都道府県のグループ単位、47都道府県ごとの3案が示されました。人件費の地域差が大きいためで、営業所の所在地の原価が適用される見込みです。

適正原価の計算では、出庫から帰庫までの稼働時間と走行距離を、車両ごとに漏れなく集められるかが前提になります。紙の日報とエクセルの転記で集計している会社は、車両ごとの稼働記録をまとめる方法を相談するところから始めると、交渉資料づくりの手間を減らせます。

実は「告示の運賃表を待つ」だけでは間に合わない理由

告示を待つだけでは間に合わない理由は、適正原価が会社ごとの稼働時間と走行距離で計算する方式になる見込みだからです。第4回検討会の資料もその方向を示しています。標準的運賃のように表の金額を探して請求する使い方はできず、自社の実績データが無ければ下限そのものを出せません。

国交省の第4回検討会資料は、特別積合せの原価を論じる部分で、適正原価では「一定期間における実際の総稼働時間及び総走行距離を算定式に直接反映する」と書いています(国土交通省 令和8年10月)。運送ごとの時間と距離の記録が、原価の入力値そのものになるということです。では、記録が無い会社はどうなるのでしょうか?

「国が金額を決めてくれるから、それまで様子を見る」という受け止め方をよく見かけます。ところが、待機時間や回送距離を記録していない会社は、計算式に入れる数字を持っていません。荷主に「この運行は適正原価を下回っています」と示すにも、根拠となる時間と距離の記録が要ります。告示の数字より先に必要なのは、自社の稼働の記録。

運賃交渉の文書の作り方は運賃交渉の例文と文書テンプレートで解説しています。適正原価の計算は、その交渉文書に添える数字を作る作業だと考えると、今から始める理由がはっきりするはずです。

「1時間・1キロ原価メモ」で運送業の原価計算はどうする?

自社の原価は、年間の固定費を稼働時間で割った「1時間あたり固定費」と、燃料などの「1kmあたり変動費」に分けると出せます。この2つの単価を毎月書き留めるのが「1時間・1キロ原価メモ」です。告示が出たら、自社の単価と国の基準を並べて比べるための準備になります。

下は4トン車1台を想定した仮の数字による試算です。人件費は全産業平均の年間賃金546万円に福利費17%を足し、546万円×1.17=638.8万円としました。車両の償却・保険・一般管理費は仮に年150万円、年間稼働時間は2,000時間とします。

【1時間あたり固定費】(人件費638.8万円+その他固定費150万円)÷年間稼働2,000時間=3,944円

【1kmあたり変動費】軽油130円÷燃費4km/L=32.5円、修繕・タイヤ10円を足して42.5円

【1運行(8時間・200km)の原価】3,944円×8時間+42.5円×200km=40,052円

【比べ方】今の運賃が3万5,000円なら、原価との差は5,052円(約13%)の不足

この試算には利潤も、待機時間料や有料道路代も入っていません。実際の適正原価は告示の計算式で決まるため、ここでの金額は自社の位置を知るための目安です。大事なのは、稼働時間と走行距離を車両ごとに毎月そろえておくことです。

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稼働データの集め方の例として、東翔運輸株式会社(車両43台・ドライバー53名)は、車両・ドライバー・休暇と勤務・出庫時間・通知・稼働を一元管理する運送統合管理システムを導入しました。同社の対象業務での自社計測では、管理業務が約50%削減され、点検漏れはゼロになっています(導入事例)。

荷主への提示は、1運行の総額だけでなく「1時間あたり」「1kmあたり」の単価に分けると、待機や回送の分を説明しやすくなります。倒産が増える中で運賃が原価を下回ったまま走り続ける危うさは、潰れる運送会社の特徴と2026年の分かれ道でも取り上げています。

実行手順

  1. 直近3か月の運行で、車両ごとの稼働時間と走行距離を集計する
  2. 年間の固定費を、人件費とそれ以外に分けて書き出す
  3. 「1時間・1キロ原価メモ」で、1時間と1kmの単価を出す
  4. 主な荷主ごとに、今の運賃と試算原価の差を一覧にする
  5. 燃料サーチャージが無い契約から、導入の相談を始める

次の3つのうち、当てはまるものを数えてみてください。

  • 車両ごとの月間稼働時間を、すぐには答えられない
  • 待機時間や回送距離を、運賃の計算に入れていない
  • 燃料サーチャージを取り決めた荷主がいない

次のどれか1つでも当てはまるなら、適正原価の告示が出る前に、まず稼働データの集め方を整えるのが近道です。最初の一歩は、自社の場合にどのデータが足りないかを無料ヒアリングで確認することです。

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最後に

トラックの適正原価は、2028年6月までに始まる運賃の下限で、10月の国交省案では人件費は全産業平均、燃料は130円/Lが基準になる見込みです。告示の数字を待つより、計算式に入れる稼働時間と走行距離を今から記録しておく方が、交渉で使える武器になります。

明日の朝は、いちばん運行の多い車両1台について、先月の稼働時間と走行距離を日報から書き出してみてください。

参考文献・出典

制作: 合同会社GYAKUTEN編集部(生成AIで下書きを作成し、出典を確認して公開)/会社・代表プロフィール

よくある質問

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この記事を書いた人

中山 蒼
この記事を書いた人
中山 蒼(合同会社GYAKUTEN 代表社員)

中小企業のWeb制作・業務システム開発・AI検索対策(LLMO)を、診断から実装・運用まで一貫して手がけています。 運送業向けの統合管理システムでは、現場の運用に入り込んで設計するところから携わりました。

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